労災保険の給付

労災保険の給付

労災保険の給付を受けられる方

労働者が業務を原因として負傷、疾病を被り、または死亡した場合、業務災害として労災保険による給付を受けられます。業務中に怪我をした場合だけでなく、業務上の有害な化学物質や、過度な労働による負担などによって発症した病気がある場合にも労災保険の給付を受けられます。

また、通勤によって労働が負傷、疾病を被り、または死亡した場合、通勤災害として労災保険による給付を受けられます。

労災保険で受けられる給付

主な労災保険で受けられる給付は以下のとおりです。

1. 療養補償給付

労災指定病院で治療を受け、または労災事故による治療費の給付等が受けられます。労災指定病院の場合は、労災指定病院にて治療を受けて、申請書を労災指定病院や薬局等を経由して所轄労働基準監督署長 に提出します。通院先の病院にお尋ねください。

療養補償給付の詳細は、以下のとおりです(労働者災害補償保険法13条2項)。

  1. 診察
  2. 薬剤又は治療材料の支給
  3. 処置、手術その他の治療
  4. 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
  5. 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
  6. 移送

2. 休業補償給付

労災事故による傷病のために労働することができず(所定労働時間の全部又は一部)、賃金を得られない場合、労災事故前の平均賃金(給付基礎日額)の8割(労災保険給付が6割負担し(労働者災害補償保険法14条1項)、休業特別支給金として2割を加算する。)の給付を受けられます。所轄労働基準監督署長に申請書を提出して給付を受けます。

3. 傷病補償年金

休業補償が長期間(療養開始後1年6か月)に及ぶ場合で、傷病の障害の程度が後遺障害等級の第1級から第3級の場合には、当該労働者の請求によって年金給付に移行する制度があります。

この給付が3年続くと、解雇規制(労働基準法19条第1項本文)が適用されないことになり、客観的にみて合理的な根拠があり、社会通念上相当である場合には解雇が有効となる(労働契約法16条)ので、傷病補償年金の給付を受けるかどうかは、慎重な検討が必要です。

また、傷病補償年金の支給を受けている間は、休業補償給付は受けないことになります。

4. 障害補償給付

(1)障害補償年金

労災事故により労働者が負傷し、または疾病にかかってそれが治癒(症状固定)した後に後遺症(後遺障害)が残った場合、後遺障害等級(第1級から第14級)の認定を受け、障害の程度応じて、障害年金や障害一時金の給付を受けられます。

障害等級が第1級から第7級にあたるときには障害補償年金として年金が、障害等級が第8級から第14級にあたるときは障害補償一時金として一時金が支給されることになります(労働者災害補償保険法第15条)。

所轄労働基準監督署長に申請書を提出します。

(2)障害補償年金前払一時金

障害補償年金を受け取れる労災事故に遭った労働者で、後遺障害の障害等級が第1級から第7級にあたる方は、ご自分の生活設計や損害賠償の関係でまとまった金銭を受け取る必要があることに鑑み、障害補償年金を一定額まで前払いにより、「障害補償年金前払一時金」として受け取ることができます(労働者災害補償保険法附則第59条第1項)。

障害補償年金前払一時金の金額は、障害等級(第1級から第7級)それぞれにおいて、給付基礎日数何日分の支給を受けるか、労災事故に遭った労働者が選択することができます。障害補償年金前払一時金の金額に障害補償年金の各月分の合計金額が達するまで、障害補償年金の支給は停止されることになります(労働者災害補償保険法附則第59条第3項)。

(3)障害補償年金差額一時金

障害補償年金の支給を受けることができる労災事故に遭った労働者が死亡した場合に、その労働者に支給された障害補償年金と障害補償年金前払一時金の合計額が、障害等級に応じて定められた金額に達しない場合には、遺族の請求により、差額を障害補償年金差額一時金として給付を受けることができます(労働者災害補償保険法附則第58条第1項)。

(4)障害補償給付の特別支給金

障害補償給付である障害年金や障害一時金に、申請により上乗せして(20%増)支払われる給付です。

5. 遺族補償給付

労災事故により労働者が死亡した場合、その遺族が遺族補償年金及び一時金を受けられます。

(1)遺族補償年金

遺族補償年金を受給することができるのは、労災事故により死亡した労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者です。ただし、妻以外の者については、労働者の死亡当時、一定の要件を満たしていることが求められます(労働者災害補償保険法第16条の2第1項、労働者災害補償保険法附則第43条第1項)。

所轄労働基準監督署長に申請書を提出して遺族補償給付を受けます。

(2)遺族補償年金前払一時金

遺族補償年金を一定額まで前払いとして受け取ることができます。

遺族補償年金前払一時金として、例えば、給付基礎日額の1000日分の一時金を受け取ることができます(労働者災害補償保険法附則第31条)。

遺族補償年金前払一時金の金額に遺族補償年金の各月分の合計金額が達するまで、遺族補償年金の支給は停止されることになります(労働者災害補償保険法附則第60条第3項、第34条)。

(3)遺族補償一時金

労災事故により労働者が死亡した場合で、遺族補償年金の支給を受けられない場合には、遺族補償一時金の支給を受けることができます(労働者災害補償保険法第16条の6第1項)。

遺族補償一時金の金額は、遺族補償年金の総額よりも少なくなると考えられます。したがって、遺族補償一時金によってまかなわれない死亡した労働者に発生した損害については、それだけ遺族補償年金が支給される場合に比べて、勤務先の企業、会社により多くの金額の損害賠償請求をすることができると考えられます。

(4)遺族補償給付の特別支給金

遺族補償給付である遺族補償年金や遺族補償一時金に、申請により上乗せして(20%増)支払われる給付です。

6. 葬祭料

労災保険により認められる葬祭料は、次のうちのいずれかとなります(労働者災害補償保険法施行規則第17条)。

  1. 31万5千円および給付基礎日額の30日分
  2. 給付基礎日額の60日分

7. 介護補償給付

傷病補償年金又は障害補償年金を受ける権利を持っている労働者が、一定程度の常時介護又は随時介護を必要とする状態にあって、実際に常時介護又は随時介護を受けているときに、当該労働者が請求することにより給付される給付です(労働者災害補償保険法第12条の8第4項)。

8. 二次健康診断等給付

脳血管疾患及び心臓疾患の発生予防のために設けられた給付です。

労働安全衛生法第66条第1項による一次健康診断の結果、血圧検査、血液検査、腹囲の検査又はBMIの測定のいずれにも異常所見があると診断された場合に、当該労働者の請求(申請)により給付される二次健康診断の給付です(労働者災害補償保険法第26条)。

9. 社会復帰促進等事業

労災保険では、保険給付に加えて、労災事故に遭った労働者やその遺族に対する社会復帰促進等事業として、①社会復帰促進事業、②被災労働者等支援事業(特別支給金の支給も含まれます。)、③安全衛生確保等事業を行っています(労働者災害補償保険法第29条)。