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改正労働安全衛生法による、高年齢労働者の労災を防止するための事業主の努力義務から考える労働安全衛生対策について

法務コラム

「改正労働安全衛生法による、高年齢労働者の労災を防止するための事業主の努力義務から考える労働安全衛生対策について」

1 改正労働安全衛生法について

労働安全衛生法という法律があります。

この法律は、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進などにより、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています。

労働安全衛生法(単に「法」といいます。)において、事業者に対し、高年齢者の労働災害防止のための措置を講じる努力義務が法制化され(法第62条の2第1項)、事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な「指針」(「高年齢者の労働災害防止のための指針」)とともに、20226年4月1日から施行、適用されています。

我が国は高齢社会となっており、いくつになられても労働力として活躍される方はこれからも増えると考えられることから、本改正は、時代の要請を受けた法改正であると思います。

2 「指針」で定められた内容としては、次の内容が挙げられます。

(1)安全衛生管理体制の確立
(2)職場環境の改善
(3)高年齢者の健康や体力状況の把握
(4)高年齢者の健康や体力に応じた対応
(5)安全衛生教育

「指針」を読んでみると、高年齢者の健康や体力に応じた対応など、高年齢者の労働災害防止のための措置に特徴的な内容があります。一方で、どの世代、会社でも生じうる労災防止のために取り組めることは数多くあるとあらためて思います。

3 例えば、次のような取り組みがあります。

  • 火災の防止
  • 職場の整理整頓
  • 健康診断の受診
  • インフルエンザ予防接種のための休暇取得
  • 長時間労働の防止とDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上の取組み
  • 建築業等における転落防止措置や特別教育の実施
  • 有給休暇の取得促進
  • 生理休暇の付与
  • 時間単位有休制度の導入

などが考えられます。

また、会社従業員の体力向上に資する社内研修の実施や、日ごろから自主的によく身体を動かし、栄養と睡眠、休養をよくとって体力を向上させることもあるかと思います。

4 そして労災事故の備えとして、特に転落、墜落、転倒など労災事故が生じやすい業種においては、労災保険に加えて、業務災害補償保険に会社が加入することで、万が一の場合の補償や紛争に対する十分な備えを会社としても行うことができると思います。

5 本改正は、事業主に努力義務を課すにとどまるものの、働きやすく、かつ高年齢者に限られない社員の健康促進に資する改正であると思います。

あらためて企業における労災リスクを点検し、メリハリを付けつつ、企業の皆様に率先して取り組んで頂きたいものだと思います。

弁護士 萩原隆志