労災事故Q&A・解決事例

労災事故Q&A

転倒事故

食品工場で働いていますが、仕事中、床がぬれていたので滑って転倒してしまいケガをしました。現在、通院中です。労災保険の給付を受けられますか。
業務中の負傷は、労災保険の給付を受けられます。通院中ですので、労災保険により治療費の給付を受けることができます。通院先の病院が労災指定病院の場合、病院に対して申請書を提出してください。また、通院継続後、後遺症が残ると言われた場合、後遺障害等級の認定の申請を行うことができます。後遺障害の等級に応じて、年金や一時金を受けることができます。

会社が、濡れている床をその都度取り除く処置をしていなかったり、安全に移動できるように十分な明るさを確保していなかったりした場合には、安全配慮義務違反として、労災保険の給付以上の金額の損害賠償請求をすることができる可能性があります。

転落事故

夫が、工場の屋根の上で工事中に屋根の一部を踏み抜いて、転落し、死亡しました。労災保険の給付を受けられますか。
労働者が業務中に死亡した場合、遺族の方は、遺族年金及び一時金を受けることができます。

また、会社が転落防止措置をとっていなかった場合、遺族の方は労働者の相続人として、会社に対し、慰謝料や、逸失利益の損害賠償請求をすることができます。

転落事故

はさまれ事故

業務中、工場で、機械の不備により機械に指を挟まれて切断してしまいました。今後、仕事にも影響が出そうです。労災保険の給付を受けられますか。
業務中、負傷した場合、治療費の他に、障害等級の申請を行い、指の切断の程度に応じて、障害年金や一時金を取得できる可能性があります。

また、機械の不備により負傷しているので、会社の安全配慮義務違反を理由として、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などの損害賠償請求をすることができる可能性があります。

落下物事故

工事現場で業務中、高所で作業中の同僚が手を滑らせて資材が落下し、私の頭に直撃しました。現在、入院中で、退院後もしばらく休業するように医師から言われました。休業の補償を受けられますか。
業務中の事故による休業の場合、平均賃金の8割を休業補償給付として受けることができます。

また、労働者の過失による事故の場合、使用者責任として会社に対して損害賠償請求をすることができます。同僚が手を滑らせて資材が落下した場合、労働者の過失として会社に対して損害賠償請求をすることができます。休業損害については、労災保険から受けった給付のうち平均賃金の6割控除した4割分を休業損害として請求する事ができます。

通勤労災

勤務中や通勤中に交通事故に遭って怪我をしました。労災保険の受給を受けられますか?
業務中や通勤中に交通事故に遭われた方は、自賠責保険や加害者が加入する自動車保険に損害を請求することができますが、労災保険を適用することもできます。

労災保険の給付を労基署(国)から受けた場合、国は、自賠責保険に対し、労災保険を給付した限度で、損害賠償請求をすることができます。労災保険給付を受けた被害者は、労災保険給付で填補することができない損害について、自賠責保険会社に請求することができます。自賠責保険には、傷害・死亡の有無、後遺障害の程度等によって損害填補の限度額があります。そこで、労災保険給付後、被害者の自賠責保険会社に対する請求と国の自賠責保険会社に対する請求のどちらが優先されるか問題となります。

最高裁は、被害者の自賠責保険会社に対する請求が、国の自賠責保険に対する請求に優先するとしました(最判平成30年9月27日裁時1709号2頁)。

火災・火傷

仕事をする過程で火傷を負いました。労災保険の給付を受けられますか。
例えば、飲食業での調理中の火傷や、工事現場で生じる火花による火傷など、仕事をする過程で火傷を負った場合、業務災害にあたり、労災給付、例えば治療のための療養給付や障害が残った場合の障害給付を受けられる可能性があります。
建物が火事になり火傷を負った場合、業務「上の」災害といえるかどうかが問題となります。事業場の施設や管理状況に火災発生や拡大の原因(瑕疵)がある場合、業務災害にあたり労災給付を受けられる可能性があります。また、会社に対し安全配慮義務違反として損害賠償請求できる可能性もあります。

機械巻き込まれ事故

息子が、勤務している工場内のベルトコンベヤーに身体ごと巻き込まれ、死亡してしまいました。労災給付は受けられますか。
業務上の災害により死亡した場合、労災申請をして労災の認定を得ることで、遺族に対して遺族補償年金が支給されます。また、遺族補償年金のほか、遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。その他、会社に対し、逸失利益や死亡慰謝料等につき、損害賠償請求することができます。

トラック事故

息子が、勤務先の物流・運送会社の運送業務に使用するトラックに勤務中にはねられ、死亡しました。労災給付は受けられますか。
物流・運送会社に勤務中の労働者が、運送業務に使用するトラックなどの自動車にはねられて死亡した場合、ご遺族が労災申請をして労災認定を得ることで、遺族補償年金や遺族補償一時金、遺族特別支給金の支給を受けることができます。

また、会社は、荷役等の業務における作業方法から生じる危険を防止するための必要な措置を講じなければなりません(労働安全衛生法第21条第1項)。会社が制動装置等(労働安全衛生規則第151条の65)を備えていないトラックを使用させているような場合には、ご遺族は、勤務先の会社に対して、安全配慮義務違反を根拠に、損害賠償請求することができます。

さらに、トラックの運転手に過失(自動車運転処罰法第5条)が認められる場合には、トラック運転手が勤務する会社に対して、使用者責任を根拠に、損害賠償請求することができます。