弁護士相談のメリット

弁護士に相談するタイミング

労災事故による被害にあったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
次のようなタイミングなどに注意して、弁護士に相談するとよいでしょう。

1. 労災事故(災害性災害)発生直後

作業現場、工事現場、機械を操作する工場などにおいて、

  • 墜落事故
  • 転落事故
  • 転倒事故
  • 追突事故
  • 機械操作事故
  • 挟まれ事故

などの労災事故に遭い、けがを負った場合、できるだけ早く弁護士に相談してください。

けがの部位、程度、労災事故に遭われた方の症状をお伺いし、治療が必要な身体の部位をすべて把握すると共に、診断書の作成を行って頂けるように、弁護士が労災事故に遭われた方やご家族に助言・指導します。

事故直後に弁護士の助言を受けることにより、必要な治療をすぐに受けることでけがの確実な治療が可能になると共に、傷病名の診断を受けて治療の継続や労災認定、後遺障害認定の基礎資料を確保することができます。

また、労災補償給付に必要な診断書、検査実施の助言を受けることができますので、労災事故直後に弁護士に相談することは、労災保険給付を受けるためにも必要といえるでしょう。

さらに、労災事故直後から発生した傷病名を特定することで、当該傷病名に対応する労災認定基準があるかを確認し、労災認定基準に該当する事実と証拠の収集を早期から、かつ正確に行うことができます。

2. 労災事故発生後、治療中の段階

労災事故が発生した後、治療中の方も弁護士にご相談ください。
治療が必要な身体の部位が見つかることがあります。

また、後遺障害等級認定に必要な画像所見(MRI画像、CT画像、レントゲン写真など)、神経学的所見、自覚症状の通院先医療機関における確保がなされているか、弁護士が労災事故に遭われた方に伺いますので、継続的な治療を行ってもらうと共に、正確な後遺障害等級認定に向けて、弁護士のサポートを受けることができます。

そして、けがの治癒(症状固定)の時期について、けがの部位・程度、治療の必要性、労災事故に遭われた方の意向などを踏まえて、弁護士と一緒に考え、主治医に相談することで、症状固定の時期を決めることもできます。

治療中の早い段階で弁護士に相談することにより、正確な治療、納得できる十分な治療、適切な時期におけるけがの症状固定を実現できるようになると考えられます。

3. 労災によるけがの後遺障害等級認定がされた時

労働基準監督署(労基署)から労災における後遺障害等級認定を受け、労災保険給付を受けたら、弁護士に相談することをおすすめします。

労災によって発生した損害(休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益など)が労災保険給付によりすべて補償されているとは限りません。

使用者(事業主)やその他労災事故に責任がある方に請求できる、まだ賠償されていない損害があるか確認するために、けがの後遺障害等級認定がされたら、弁護士に相談することをおすすめします。

4. 労働基準監督署の調査や警察署の捜査を受けた時

労災事故に遭った場合、労災認定のために労基署の監督官から資料提出または面談による聴き取りにより調査を受けることがあります。

また、犯罪の捜査のために、警察署の警察官から資料提出または取調べによる捜査を受けることがあります。

これら労基署の調査や警察署の捜査を受けた時、正しくない事実を述べたり資料を提出したりすると、その後の労災認定や後遺障害等級認定に不利益な取り扱いを受けてしまう可能性が発生します。

そこで、労基署の調査や警察署の捜査を受ける時には、弁護士に相談し、どのように回答し、調査や捜査に協力すればよいか、弁護士のアドバイスを受けると良いでしょう。

5. 労災事故と時効

労災事故による労災保険給付や損害賠償請求には、時効期間(請求できる期間)が設けられています。

したがって、いつまでも何もしないでいると、時効期間が経過し、何も請求でいないことになりかねませんので、注意が必要です。

(1)労災保険の時効期間について

  • 療養補償給付:療養に必要となる費用の支出が具体的に確定した日の翌日から2年間
  • 休業補償給付:労働不能のため賃金を受けない日ごとにその翌日から2年間
  • 葬祭料:労働者が死亡した日の翌日から2年間
  • 遺族補償給付:労働者が死亡した日の翌日から5年間
  • 障害補償給付:傷病の治癒・症状固定日の翌日から5年間

あわせて注意すべきは、いつから期間制限が起算されるのかという点です。これは給付の種類によって異なり、たとえば休業(補償)給付は、労働不能のため賃金を受けない日ごとにその翌日からカウントされます。このほか、(死亡事案における)遺族(補償)給付は労働者が死亡した日の翌日から、障害(補償)給付は傷病の症状固定日からと解されています。

(2)損害賠償請求の時効期間について

損害賠償請求権の時効期間は、

  1. 不法行為(民法709条など)を理由とする場合は、損害及び加害者を知った時から3年間、
  2. 債務不履行責任(安全配慮義務違反など)を理由とする場合は、結果が発生した時から10年間

です。

ただし、労災事故によるけがの治癒(症状固定)があり、後遺障害の存在を具体的に認識できる場合には、加害者側に損害賠償請求ができる程度に損害の発生を知った時(症状固定の診断を受けた時)から時効期間が開始するとする最高裁判例(最高裁平成16年12月24日判決判例時報1887号52頁)もあります。

もっとも、この判決は、この事案に応じて判断されたものに過ぎず、一般的な基準を示したものではないと解されています。

その上で、裁判所の考え方は、大きく分けて、不法行為あるいは債務不履行である労災事故があった時とするものと、治療終了・症状固定時とするもの、に分かれ統一していないようです。前者は基準としては明確ですが、他方で、治療終了・症状固定の時でなければ、具体的な損害額が確定しないともいえますので、後者の考え方が適切ではないとか思われます。ただし、全ての事案で裁判所が後者の考え方によって判断するか不明でありますので、早期にご相談して頂くことが何より重要です。

他方で、事案によっては、労災事故から一定の期間が経過した後でも、権利行使ができる場合もあります。労災事故から一定期間経過した方についても、是非ご相談頂きたく存じます。

なお、2020年から施行される改正民法において、死亡事案や人身への傷害事案については、不法行為構成の場合は、「損害及び加害者を知った時」から5年(改正民法724条の2)、及び「不法行為の時」から20年(改正民法724条1号)、債務不履行構成の場合は「権利を行使することができることを知った時」から5年(改正民法166条の1項1号)、及び「権利を行使することができる時」から20年(改正民法167条、同166条1項2号)とされています。文言は異なりますが、不法行為構成の場合でも債務不履行構成の場合でも同じ結論になると解されています。民法の改正によって、期間制限の期間は変わりますが、期間制限の起算点をどのように考えるかは従来と同じ問題が残ります。

時効期間が経過しないように、早めに弁護士に相談し、労災保険や損害賠償請求ができるようにされてください。